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税理士の休日

自己同一性(養老孟司の「バカの壁」)

2012.06.11

土谷昭司

 だいぶ世間からは遅れていますが、養老孟司の「バカの壁」なる本をめくってみました。

この著者は、元東大医学部教授で脳の専門家のようです。書かれている内容が、かなり難しくて、理解できないところが半分以上ですが、ひとつ心に打つものがありました。
 
 人間は寝ている間も含めて、変化し続けているというのです。脳も変化している。ところが、毎朝起きると、自分は昨日の続きの自分であると思い込むというのです。それは、脳の働きによるもので、脳は「自己同一性」を追求するという作業を毎日行っている。
しかし実際は、昨日の自分と今朝の自分は別物であると。
 
 こんな記憶はありませんか。
小さな子供の頃、目覚めると女性が何か言っている。「〇〇ちゃん、もう起きた? ・・・」。そこで、自分がその家でその女性の子供であったことを思い出した(思い出させられた)いうような記憶はありませんでしたか。
 
「自己同一性」は、社会が要求するものでもあり、昨日の自分に責任を持てということなのでしょう。昨日の失敗を繰り返すなということかもしれません。昨日の失敗の上にいるからこそ、今日の進歩があるのです。これは、生物学的に生命を脅かすようなリスクを回避するという学習機能であり、或いは、社会的に自分の立場、独立、自由を脅かすようなリスクを回避するという学習機能でもあります。
 
 でも、勉強のできない子供は、朝起きると自分が勉強のできない人間であることを思い出してから、その日を始めてしまいます。成功している人間は、昨日までの成功を思い出して今日も成功しようと張り切って起床します。
 悪い意味で「自己同一性」が機能してしまっているのです。
 
 ひとつ、「勉強ができない子」「勉強の嫌いな子」「駄目な奴」の概念を考え直さなくてはいけません。アインシュタインだって「勉強ができない子」「勉強の嫌いな子」だったのです。今「勉強ができない子」だから、明日は「勉強ができる子」に、進歩していくことが出来るのです。今「勉強の嫌いな子」だから、明日は「勉強が好きな子」に変わることが出来るのです。今「駄目な奴」だからこそ、明日は「すごい奴」に変われるのです。
 
だって、昨日の自分と今朝の自分は別物なのですから。脳の中身だって変わっているのですから。新しい気持ちで一日を始める。昨日の失敗を今日の糧にして、新しい一歩を踏み出す決心をする。
でも、絶対にしてはいけないことがあります。家に帰ったとき、或いは朝目覚めた時に、隣にいる妻子に「君は誰?」などと言ってしまわないように